(作者)

鮑照(ほうしょう)

※南北朝時代を代表する宋の詩人。

(題)

呉興黄浦亭庚中郎別

(原文)

風起州渚寒 雲上日無輝
連山眇煙霧 長波遥難依
旅雁方南過 浮客未西歸
已經江海別 復與親眷違
奔景易有窮 離袖安可揮
懽觴爲悲酌 歌服成泣衣
温念終不渝 藻志遠存追
役人多牽滞 顧路暫奮飛
眛心附遠翰 炯言藏佩韋


※JIS第1水準・第2水準内で表記しております。

(釈文)

呉興の黄浦亭にて庚中郎と別れる。
(ごこうのこうほていにてゆちゅうろうとわかる)

風が起こって中島のなぎさは寒く、雲は立ち昇って太陽にも輝きが無い。
連なる山は煙る霧がかかってはるかにかすみ、沖に打つ大浪は遠くて
近づき難い。旅の雁は今ちょうど南に過ぎて行く秋となったが、所定めず
旅にある自分は、まだ西のかた家郷に帰れないでいる。すでに都から
長江や海を遠くへだてて別れて来たのに、また親しい好意ある人に別れる
ことになった。奔り去るような日かげは尽きて暮れやすく、宴も終わりに近い
が、どうして別れの袖を振ることができようか。相会して歓んで挙げる盃が、
悲しい別れの酒を酌むことになり、楽しくて歌っていた私の服は、そのまま
名残を惜しむ涙の濡れごろもとなってしまった。温かなやさしい君の心は
いつまでも変らず、美しい君の志を詠まれた時は、遠く思い出して慕うこと
であろう。役目のある私のような人間には、身を牽き止め滞らすものが多く
て、路を顧みては、勢いよく飛ぶように去る人に恥ずかしく思う。私の愚かな
惜別の詩を、遠く飛ぶ鳥の翼に託して旅行く君にささげ、君のかがやくよう
に道理明かなおことばを、つきつめた心を緩めるために古人が佩びたという
なめしがわのように、私の胸に大切におさめたいと思う。